2017年12月12日火曜日

2017年シーズンまとめ その7

バイクに乗っていると声をかけられることがある。
走行中も停車中も。

走行中の声掛けは主に拡声器(スピーカー)で行われ、大抵は緊急車両なのであまり問題はない。
内容は命令や指示、それも法令に基づいたものであり、殆どの場合左に寄るとか停車するとかなので問題はない。
切符関係についてはもう諦めて欲しい。自分は次も青色免許の予定だ。


問題は停車中の声掛けだ。
食事中、電話中、撮影中…こちらが何をしていようが話し掛けられることがある。
すいませんや少しよろしいですか等の断りを入れる人は、20人に一人くらいの割合だろうか。

声を掛けてくる、話しかけてくる人の内容は以下の4つに分類される。
・このバイク何cc
・このバイクいくらするの
・どこからきたの
・暑くないの/寒くないの
もちろん例外はある。
シャケいるだろ!シャケ! みたいな例外も当然あるが、それはひとまず置いておこう。

上記の声掛けはオートバイに乗っている人であれば大多数が受けたことがあるのではなかろうか。
特に最初と二つ目の声掛けに関しては、ナンシーやイクラちゃんなどと呼称するほどポピュラーとなっている。
少なくとも北海道の…根室と知床と離島以外の場所では自分は声掛けを受けている。

オートバイに乗っている人間に気軽に声を掛けても問題がない。
そういう認識が世間に広まっている気がしてならない。
同じ事を車に乗っている人にするケースはまずないだろう。
車は声を掛けづらく、オートバイは声をかけやすい。
そうした判断理由があるのかもしれないし、オートバイに乗っている人に声をかけると皆喜ぶと思っている人もいるだろう。
話し好きで社交的で人当たりが良い人だけであればいいのだが、世の中には正反対の人もいる。
そういう人に声を掛けてしまうと、掛けた方も掛けられた方も嫌な思いをする事になる。
空気入れ片手に自転車に空気入らないので入れてくれと声を掛けてきた人に、自転車屋に行けと言う事態が起こることもない。


正直な話として、この話題は書いていて難しいと感じた。
ごく個人的な希望として、自分はこうした声掛けが消滅することを望んでいる。
声を掛けられるのが嫌ならばオートバイに乗らなければいいじゃないか という意見はもっともだが、ボア・ストロークが何かわからない人に排気量を答えるのもどうかと思うのだ。
故・佐藤大輔先生ならば音が聞こえる仕組みがわからなくても問題がないのでいいじゃないかと言いそうだが。


だから、朝の支笏湖へ。2を読んでとても驚いたのだ。
引用しよう。

ゆきかぜの元に戻り、
出発準備をしていたら、
声をかけられた。
上品な60代と思しき男性の方で、
「グッツィ、いいですね。よく走りますか?」
と。
「ええ。とてもよく走ります。」


これが自分にとって一種の憧憬であると理解した。
よく走りますか?
自分がそう問われたら、とても驚いてしまうだろう。
ええ。とてもよく走ります。
そんな答えをするのは難しいだろう。


自分は話すことが好きではないし、ツーリング中に他車の存在を必要としない。
一人でいる事にすでに価値を見出している。
きっとこの先も自分から誰かに声を掛けることはないだろうし、答える事にうんざりしてしまう質問をいくつも投げかけられるだろう。
でも少しだけ期待してみようと思う。
驚きの声掛けが訪れる瞬間を。
あと何年オートバイを走らせるのかはわからないが、その事を期待してみようと思ったのだった。

2 件のコメント:

  1. 緒崎さん、取り上げてくださって光栄です。ありがとうございます。

    私にこの時に話しかけてきた方は、私よりもずっと古くからのバイク乗りでした。その日は車で来ていたのでした。
    現在は愛車を持っていないとのことでしたが、1970年ごろからの車歴は、具体的には忘れてしまいましたがなんか相当にすごいものがありました。ぱっと見てグッツィだとわかるのも、70年代~80年代初頭の頃のモトグッツィをよく知っていたから。
    なんか、すごい大先輩なのでした。全然すごくなさそうで、話しているうちに(というよりも、どうしてそんなに詳しいのかとか、うかがっているうちに)だんだん、「あ、この人、筋金入りのバイク乗りだ。しかも素人レベルじゃない…」と、わかってきたのでした。
    でも、「最近は乗ってないから、わからないんですよ。」と言いつつ、
    「でも、やっぱり欲しくなってきちゃって。」
    「とても綺麗なグッツィだなと思って。 なんか、走りそうだなと思ったものですから…」と笑顔で。
    全然偉そうでなく、礼儀正しい方でした。
    秋の寒い日、雨模様で、早い時間。支笏湖畔の駐車場も人はまばらで、「あ、バイクだ。声掛けたれ。」というノリの人はあまり来ていない環境条件だったというのも、こういう出会いの背景にあったかもしれません。
    めったにない、素敵な邂逅でした。


    ちなみに、私が声をかけられたので、印象的だったベスト2は、
    20代の頃、狩勝から北見へ抜ける国道を走っていたら、国道脇で、なんか激しく手を振るおばちゃんに止められて、「これ、いま絞ったばかりの牛乳。飲んでいきなさい」と、コップで牛乳を飲まされたことと、
    やっぱり20代の頃(だったと思う)、四国、高知県の国道439号だか、県道304だかを広島から1泊のツーリングで走っていたら、止められて、「佐藤さんちはどこでしょう?」と聞かれたことでした。
    牛乳は美味しくいただき、佐藤さんち(もしかして佐藤さんじゃなかったかもしれませんが…)はしばらく一緒に探して、近所の人に聞くもわからず、「役に立たなくてすみません」と言って、立ち去ったという…、そんな思い出があります。なんじゃこりゃ。

    ちなみに、ちなみに、声をかけてしまって失敗したベスト(ワースト)1は、
    鹿児島の大隅半島の1車線の田舎道で、道端に止まっていたパトカーが僕が通過する瞬間、ウ~とサイレンを鳴らして、そのまま沈黙してしまったので、走り去った僕は気になって、15秒くらいでUターンして引き返し、「どうしました?何かありましたか?」とパトカーの中にいた巡査さんらしき二人組に声をかけると、二人は見たこともないような複雑な表情で「あの~、あなたがスピード違反です。」と言ったのでした。

    長文申し訳ありません。

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    1. 大変丁寧なコメントを頂き、ありがとうございます。


      「よく走りますか?」 のくだりはとても衝撃的で、どのような人物であればそんな質問が可能なのか?
      頂いた説明から、それを垣間見ることが出来ました。
      素敵な質問の仕方で、答え方だと感じました。
      「ええ。とてもよく走ります。」 の驚き。
      ちょっとこの驚きを文字だけで伝えるのは難しい、それほどの驚きでした。


      オートバイに乗っていれば、やはり誰もが印象的な質問を受ける。
      所変わっても離れても、日本だけに限った話では無いかもしれませんね。
      牛乳と佐藤さんち、シャケオヤジに空気入れ…
      いつか誰かに話すネタとして、そっと仕舞っておきたいと思います。


      スピード違反を告げられた樹生さんのその後のお話は、どこかでお会いした時にお訊ねしたいと思われます。

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